メニュー

強迫性障害の治療

強迫性障害とは

 強迫性障害とは、ある特定の考えがいつまでも頭から離れない(強迫観念)、また、その考えを打ち消すためにある特定の行為を繰り返さないと気がすまない(強迫行為)などの強いこだわりがあり、そのために日常生活や社会生活に支障をきたす障害です。よくみられるのは、不潔恐怖から洗浄行為を繰り返すもの、過失の不安から確認行為を繰り返すものなどですが、それ以外にもさまざまなこだわりのタイプがあります。

 この障害の発症には、さまざまな要因が関与していますが、最近では、脳の中のセロトニンやドパミンなどの神経伝達物質のバランスが不調をきたしている状態が関与していることが考えられています。

強迫性障害の症状

 強迫性障害の症状は、強迫観念と強迫行為からなります。強迫観念とは、頭にこびりついて離れない考えのことで、強い不安や不快感をひきおこします(手を洗ったのにまだ汚れている気がする、など)。強迫行為とは、強迫観念からうまれる不安や不快感を打ち消すために、繰り返し行われる行為のことです(繰り返し手を洗い続ける、など)。

 多くの場合、これらの強迫観念や強迫行為は、「考えすぎである」「不合理である」と認識されていますが、それでも不安を打ち消すために強迫行為を繰り返すのをやめることができないのが、この障害の特徴です。

 気をつけなければいけないのは、もとに他の精神障害があり、その症状の一部として強迫症状が出ている場合があることです。たとえば、もとにうつ病や統合失調症などの病気があり、その上に強迫症状を認める場合があります。また、発達障害などの問題があり、その上に強迫症状が出現する場合もあります。そのような場合は、もとにある精神障害をふまえた治療が重要になります。

強迫性障害の治療

 強迫性障害の治療は、根気よく継続することが重要です。薬物療法により、不安や不快感をやわらげるのとあわせて、話し合いにより、不安や不快感に対して強迫行為をしないで対処するやり方を考えてゆきます。また家族の対応を工夫することが症状の改善に役立つ場合があります。

薬物療法

 強迫性障害で、よく使用される薬としては、SSRI(セロトニンという神経伝達物質に作用する薬)があります。これは、うつ病でも使用される薬ですが、強迫性障害でみられる強い不安や不快感をやわらげる効果があります。毎日服用を続けることにより、徐々に効果があらわれます。効果があらわれるまでに、早い人で約4週間、長い場合には約3カ月かかる場合があります。すぐによくならないからといってあきらめず、根気よく服薬を継続することが重要です。

 不安が強くてSSRIだけでは十分な改善が得られない場合は、SSRIに追加して、新規抗精神病薬(セロトニンやドパミンなどの神経伝達物質に作用する薬)や抗不安薬を使用することもあります。

薬物療法以外の治療

 薬物療法以外の治療で、まず重要なのは、本人に強迫性障害について説明することです。強迫性障害に悩む方は、自分のこだわりを不合理であると認識しているだけに、まるで自分が悪いように感じてしまう場合もあります。本人の、「わかっていてもやめられない」という苦しみを受けとめるとともに、それが強迫性障害という状態であり、治療によって改善するものであることを説明します。

 強迫性障害では、強迫観念による不安が増大した際に、強迫行為を行うことによって不安が軽減します。しかしそれは一時的なものであり、それを繰り返すことで、少しでも不安になると強迫行為を行うパターンが強化されるという、悪循環が生じています。そのことについて本人と話し合い、不安に対して、強迫行為で対応するのではない対処の仕方を考えてゆきます。具体的には、強迫観念による不安が増大しても、あえて強迫行為を行わないようにします。これによって、最初は強い不安を抱きますが、時間とともに、強迫行為を行わなくても不安が自然に軽減することを経験できます。こうした経験を繰り返すことにより、これまでのような強い不安を感じなくなり、強迫行為を行いたい気持ちも軽減してゆきます。

 強迫性障害の治療に際しては、家族の対応も重要です。家族が、本人が強迫性障害という状態で、「わかっていてもやめられない」状態であることを理解することが、本人のサポートになります。難しいのは、本人の強迫行為に対する対応です。強迫行為を無理に止めようとすることは、本人の不安を強めます。一方で、本人から強迫行為を手伝うように言われた場合、その通りに手伝うと、強迫行為がエスカレートすることもあります。場合によっては、本人、家族、主治医で話し合い、強迫行為についてのルールをつくることが、改善に役立つことがあります。

執筆・監修:院長 高野佳也

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME