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社会不安障害(社交不安障害)の治療

社会不安障害とは

 社会不安障害は、social anxiety disorder の日本語訳で、他に、社交不安障害と訳されたり、SADと略されたりすることがあります。これは、人から注目されるような場面や人との関わりをもつ場面において、自分が恥をかいたり恥ずかしい思いをするのではないかとの不安があり、さまざまな身体症状が生じるため、そのような場面を避けたり苦痛に感じたりするようになる障害です。この障害の発症には、さまざまな要因が関与していますが、最近では、脳の中の不安や恐怖をつかさどる部分が過敏になっている可能性が考えられています。

社会不安障害の症状

 人から注目されるような場面や人との関わりをもつ場面において、自分が恥をかいたり恥ずかしい思いをするのではないかとの不安をいだきます。たとえば、人前で話をする、目上の人と話をする、
などの場面に不安をいだく場合があります。そのような場面になると、不安が強まり、動悸、発汗、体の振えなどの身体症状が出現します。そのために、そのような場面をおそれて避けるようになり、どうしても避けられない時には強い苦痛を感じるようになります。その結果、日常の生活や仕事に支障をきたすようになります。

社会不安障害の治療

 社会不安障害の治療では、苦手な場面に対する強い不安が軽減し、そのような場面を避けることが
減り、社会生活の幅が拡がることが治療の目標となります。そのために、薬物療法を行いながら、あわせて精神療法も行って、その中で本人がいだく不安について話し合います。その上で、少しずつ今まで避けていた場面を経験してみることを増やしていくことが重要です。

薬物療法

 社会不安障害で、よく使用される薬としては、SSRI(セロトニンという神経伝達物質に作用する薬)があります。これは、うつ病でも使用される薬ですが、不安や恐怖に関する過敏性を改善する効果があります。毎日服用を続けることによって、徐々に不安や恐怖が改善してゆきます。
 SSRIで十分な改善が得られるまでには時間がかかる場合があるので、それまでの間、抗不安薬を併用することがあります。抗不安薬は、服用して短時間で不安や緊張をやわらげる効果が得られます。
そのため、おそれている場面に直面する際に、抗不安薬を頓服薬として服用するなどの形で使用します。
 以上のような薬物療法を継続することにより、以前よりも不安や恐怖が軽減したならば、少しずつ
今までおそれて避けていた場面を経験してみることに取り組みます。その際には、精神療法が助けになります。

精神療法

 社会不安障害では、人から注目される場面や人と関わる場面で、恥をかくことをおそれ、また、身体症状が出現することをおそれるようになります。このように、「また具合が悪くなるのではないか」との不安が、ますます本人を緊張させ、身体的不調に本人の気持ちを集中させて、実際に身体症状が出現する結果につながります。そして、そのことで周囲の人から批判的に見られると思い、ますます同様の場面をおそれるようになります。そのような悪循環が起きている場合が多いのです。

 精神療法では、本人の不安や苦痛を受けとめるのと同時に、そのような悪循環が起きていることを説明し、不安に対する対処法をいっしょに考えてゆきます。たとえば、身体症状はある程度は薬で予防する
ことができますし、あらためて周囲の人の様子を見れば、自分を批判的に見ているわけではないことがわかるかもしれません。

 以上のような話し合いを重ねながら、少しずつ今まで避けていた場面を経験してみることを増やして
ゆきます。それを継続することで、社会生活の幅が拡がってゆきます。

執筆・監修:院長 高野佳也

 

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