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精神分析的精神療法

精神分析的精神療法とは

 精神分析的精神療法とは、精神分析の考え方にもとづく治療です。精神分析は、フロイトによって創始された、人間理解と治療のための方法です。精神分析の考え方の基本は、人の心の中にはさまざまな気持ちが動いており、それによって不安や葛藤が生じ、心の働きに影響するというもので、そのような心のあり方を、無意識的な部分も含めて理解していくことをめざします。実際の精神分析的精神療法では、本人が心にうかぶことを自由に話してゆき、そのことを通して、治療者(治療を担当する人)といっしょに、心の中でおきていることについて考えてゆきます

精神分析的精神療法の適応

 うつや不安に悩む人で、一般外来診療での薬物療法や精神療法だけでは十分に解決しない自分自身の問題があると感じており、自分の心について考えたいという希望のある人に、この治療が役に立つ場合があります

 治療の開始を考えるにあたり、まず本人がこの治療を希望していることが重要です。また治療を開始する前に、何回か予備面接をもちます。予備面接の中で、本人の今の心の状態、今にいたるまでのいきさつ、自分の心について考えたいという希望、心の中のことを話す力、などを検討します。予備面接の結果、この治療が役に立つと考えられたなら、本人と話し合いのうえ、治療を開始することになります。

精神分析的精神療法の実際

 精神分析的精神療法は、心の中でおきていることを継続的に考えていく治療ですので、十分な時間と
回数が必要です。具体的には、1回45分から50分の面接を、週1回以上の頻度で、決まった曜日の決まった時間に定期的に持つことを継続してゆきます。どのくらいの期間継続するかについては特に決まりはなく、十分な改善が得られ、この治療がなくてもやっていけそうとなった時に、話し合いのうえで終結となります。

 精神分析的精神療法については、面接1回あたりの料金の目安は、7,000円~9,000円です。
面接の頻度、曜日、時間帯などにより多少異なります。

 実際の面接では、本人が心にうかぶことを自由に話してゆき、そのことを通して、治療者(治療を担当する人)といっしょに、心の中でおきていることについて考えてゆきます。多くの場合、対面法と言って、普通に椅子にすわって話をします。ただし、心の中の無意識的な部分についての理解をさらに深める目的で、寝椅子に横になって話をするという方法をとる場合もあります。

 心にうかぶことを自由に話すといっても、内容はさまざまです。今の具合のこと、最近の生活のこと、身近な人のこと、これまでの人生のこと、子供の頃のこと、夢、などなどです。特に何について話さなければいけないということはありません。大事なのは、その時心にうかぶことを話すということです。話しているうちに、さまざまな気持ちが生じてきます。それらをみてゆくことで、今まで気がつかなかった
自分の中の気持ちに気がついてゆきます
。時には、何もうかんでこない、話す気がしないということもあります。その時は、そのようにさせる何かがあると考えて、それについていっしょに考えてゆきます。

 また話しているうちに、治療者に対して、さまざまな気持ちがおきてくることがあります。もっと助けてほしい、言いたいことが言えない、見捨てられるのがこわい、などなどです。このような気持ちは、
現実の治療者に対する気持ちであるとともに、過去に重要な人物(親など)との間で経験した気持ちが今によみがえってきたもの(これを転移と言います)でもある場合があります。したがって、治療者との間でおきてくる気持ちについて話し合うことが、心の中の人とのかかわり方や人とのかかわりでおきてくる気持ちを理解するのに役立つことがあります。

精神分析的精神療法の治療機序

 精神分析的精神療法の治療機序については、さまざまなことが言われていますが、大きく言うと、自分の心の中のことを今までよりも理解できるようになること、心の中の人とのかかわり方が今までよりも安定したものになることの二つが言われています。

 そのためには、治療の中で、自分の心の中の気持ちを治療者に理解されたという経験が重要です。自分の気持ちであっても、自分でわかっているのは一部です。過去に重要な人物(親など)との間で経験した気持ちの中でも、苦痛な気持ちなどは、無意識の中に抑圧され、本人にも気づかれないまま、今にいたるまで本人の心の中の人とのかかわり方を不安にみちたものにしている場合があります。そのような無意識の中に抑圧されている気持ちは、治療の中で、自由に語られた話や転移を通して表現されます。それが治療者によって理解されることで、やがては自分でも今まで気がつかなかった気持ちを理解できるようになり、苦痛な気持ちも含めて、自分の気持ちをうまくかかえていけるようになります。そしてまた、自分の心の中の気持ちを治療者に理解されたという経験は、本人の人とかかわることへの不安をやわらげ、心の中の人とのかかわり方が、不安にみちたものから安定したものへと変化してゆきます。

 以上のようにして、自分の気持ちを自分でかかえていけるようになり、人とのかかわり方が安定したものになることは、うつや不安を改善するだけではなく、その人の心をこれまでよりも豊かなものにしてゆきます。

執筆・監修:院長 高野佳也

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